エオルゼア社会科見学旅行

2022年7月初めてエオルゼアの地に降り立ちました

寄り道(8)価値観の変化

アウトレット概念がなさそう

 

寄り道:Lv7.あちこちの軋み

 シルバーバザーの広場で井戸の影に立っているファファフォノは強気そうな表情をしている。

「へっへっへ、ひとつ儲け話にのらないか。なあにそんなに難しいこっちゃねえよ。ラスティコブランからコブランの虫油を4つとって二号杭打塔のアデラードに渡すだけだ。な? 簡単だろ?」

 簡単だが、それでどう儲けるのだろう?

「ここの連中は、杭打塔を毛嫌いしてるからな。過去の栄光にしがみつくばかりで、新しいものは全部気にくわないのさ。俺もシルバーバザーの住人だがな、ここに未練はねぇ。俺は金払いのいい方につくぜ」

 ファファフォノは地上げ屋側についた住民らしい。普段から「おいしい儲け話はないもんかねえ。ま、こんなしみったれた集落じゃ無理な話か」と話しているようだ。

 そういう男の利益になることはしたくないのだけど

 集落を出て、少し歩くとラスティコブランがうようよいる。よくよく観察するとすごい姿だ。厚い二枚貝のような胴体の表面にびっしり結晶が付着していて、開いた口の部分から歯がのぞいている。口の両側から蚯蚓のような長い足が下に伸び、上に伸びる触覚の先端に発達した眼球が飛び出ている。拡大して見るまで、陸上の蛸みたいだなあと思っていた。

 蛸のような生物だと思っていたから、虫油と言われて、なんだかよくわからなかったのだ。この姿を見れば、確かに虫っぽい。蚯蚓には油のイメージがあるし。油滴というのかな。

 観察した後は討伐しコブランの虫油を獲って、アデラードのもとへ行った。

「何だ? 俺は砂の詰まった杭打塔の掃除で忙しい。コブランの虫油があればいいんだが

 コブランから搾り取ったベタベタの油、ありますぜ。

コブランの虫油じゃないか! ファファフォノに頼まれてんだな、あいつも物分かりのいい奴だ。この辺りは、じきに富豪向けの居住地になるんだ。だが、ちょいと地盤が不安定なもんで、こうして杭を打って造成してるのさ」

 シルバーバザーの桟橋から見える、海の向こう側の土地は不思議な地形をしている。巨大な洞窟が剥き出しになったような、鍾乳洞の空間を断面にしたような、頼りない柱が上下二層を支えているような景色だ。

 エオルゼアの大陸がどのようにできたのかわからないが、長い年月をかけてこの湾が海で削られてできたのか、地層が隆起したものなのか。

 地図を見たところ、金槌台地の地層と海の向こう側の細い柱の上の地層が同じ高さになるのではと思う。

 現実でも地学を履修していないので想像でしかないけれど、あちらの景色と一続きの大陸であるなら、地盤が不安定という話が腑に落ちた。

 杭もかなり深く打たねばならないのだろう。

「本当はもっと広くシルバーバザーの中心部まで居住地を広げる予定だったんだが、立ち退きがなかなか進まなくてな。キキプって言ったかな、大きな土地の権利を持ってる頑固なババアが、どうしても交渉に応じないらしい。全くこっちはいい迷惑だよ」

 キキプ!土地持ちの人だった!ただの集落の住人ではなかった。

 土地の所有者なら、シルバーバザーを簡単に手放すことも難しいはずだ。まだ住民もいるのだし。

 彼女の故郷ということは、土地の権利は受け継いだものなのかもしれない。または土地を守るために権利を集約して持っているとか。

 ガルフリダスが土地を売る可能性の話をしていたから、シルバーバザーの全区画の権利をキキプが持っているわけでもなさそうだ。

 裕福そうな部屋でむっつりと座っていた人物もまた何か権利を持っているに違いない。

 

 ファファフォノの儲け話って、本当に些細なところなんだな。地上げ屋側の利益になることをする、それば杭打塔の整備を手助けするという。

 

寄り道:Lv8.落ちた誇り

「くそっ、あの荷運び人、舐めやがって

 虫油の用を済ませたので、ファファフォノに報告に行くと、今度は苛々を抱えていた。

「ああ、あんたはさっきの冒険者か。ウルダハの商人に頼んでた品が届いたんだがよ、荷運び人が手を抜きやがったみたいで、運んできた荷物を、門の前に置いて帰りやがったんだ。ここが宛先だからって、適当な仕事しやがって

 ファファフォノは私を見て、ニヤリとした口調で「 へっ、お前は心優しい冒険者ってやつだろ? 荷物を拾うのを手伝ってくれよ!」と言う。だが自分も一緒に拾うつもりはないようだ。

 簡単な作業だけれど、苛々の原因を見るのも嫌なのだろう。

「荷物は箱に入ってる。全部で三つだ、頼んだぜ?」

 蓋のついた木箱を運んで渡す。

「よしよし注文分は揃ってるな、ありがとよ! これは、ウルダハの名店サンシルクの衣装さ。といっても、どれも訳ありの不良品だけどな。ウルダハじゃぁゴミだが、ここでは立派な売り物さ。ここの奴らにゃ、物がいいかどうかなんて関係ねえ、ブランド品だったらそれでいいんだ」

 普段の世界にブランドのB級品が並ぶアウトレットはよくある。だが本当のハイブランド、老舗の高級店は訳ありの不良品を流通させることはないと聞く。ウルダハで知った高級店、エシュテムやサンシルクはそういうハイブランドをイメージしていたけれど、アウトレットに出店するタイプのブランドということなのかな。

 ハイブランドの下請け工場が偽物を流通させる事件があるけれど、今回のサンシルクの場合は店自身が正式にB級品を販売しているのだ。

「金回りの良かった頃は、こんなことなかった。さびれた今、ここに残ってる連中なんてのは、プライドが高くて、薄っぺらい奴だけさ。過去の繁栄にすがりながら、誰も何も変わろうとしない。時代に淘汰されるべきなんだよ、この集落は」

 吐き捨てるファファフォノの後ろで、住民の女性たちがちょうど服のことを話題にしていた。

「その服どこのブランド?」

「いいでしょ?」

「それくらい私だって!」

 こんな会話、現実世界でもありそうだ。「訳ありだったから安く買えた!」「端にちょっと難あるけど、目立たないからいいよね!」くらい自分にも経験があるので、全く違和感がない。

 偽物を買って、そのブランドを持っていると誇示しているわけではないのだ。逆にサンシルクを本当のハイブランドとして利用していた富裕層は、サンシルクのブランド価値が下がったと判断して離れていくのでは?

 アウトレットが大きく展開する前は、ハイブランド信仰があったらしい。それが富の象徴になるから。バブル崩壊後はハイブランドより価格の下がるそこそこのブランドの店舗の並ぶ、高級デパートより入りやすいショッピングモールが増えた。

 購買層の懐事情に伴う価値観や意識の変化は当然のことだ。

 私は現実の変化を知っているから、逆にファファフォノの主張に違和感を持った。B級品販売を行っているのはサンシルクの方で、その商法に乗っている自分と共に棚上げして、購入客を批判していることに矛盾を感じないのかな。

 ハイブランド信仰のまま、アウトレット業態に文句を言っている。行く行くはファファフォノが淘汰されるべき側になるのかもしれないのに。