エオルゼア社会科見学旅行

2022年7月初めてエオルゼアの地に降り立ちました

体験学習:裁縫師(1)

サボテンダー?カクター?

 裁縫師ギルドに行って裁縫師も開放することにした。

 受付のマロンヌがギルドマスターのレドレント・ローズとはもう話したかと聞いてくる。

「ああ見えて、凄いデザイナーなんですよ?裁断するハサミひとつで、ウルダハの流行が変化する。まさしくファッション界の生ける伝説なんです!」

 まだお目にかかっていないので、ギルドの中を見回した。奥の作業フロアを見下ろす場所で、腰に手を当てて立っている存在感の大きな人がギルドマスターだった。

「あらなーに?裁縫について聞きたいのかしら?」

 まずはレドレント・ローズ自身のことを教えてもらう。

「この裁縫師ギルドのギルドマスターをしてるわ。美しすぎちゃって、時々踊り子に間違われるのが悩みね。裁縫師ギルドは、流行に敏感なウルダハっ子たちが、最も注目するファッションの発信地なの。ここで作られる服はウルダハいえ、エオルゼア中の流行を左右すると言っても過言じゃないわ。お客の期待に応えるため、私は常に美の追究を怠らないのうふふ」

 流れるような自己アピールはどんな声で語られているのだろう。レドレント・ローズ自身の美しさが、エオルゼア中の流行を下支えしているとも読める気がする。穿ちすぎか。

 現実の世界では、ファッションと流行と美は必ずしも繋がっていないと感じるので、変に考え込んでしまった。

 レドレント・ローズの腰にも、エーセルワインがつけていたような刺繍枠がさがっている。こちらは緑のサボテンダーが刺繍されていた。ウルダハではカクターをよく見るからカクターだろうか。でも頭に花が生えている。そもそもカクターとサボテンダーってどういう違いがあるのかな。

 手袋の上から指輪をはめていて、手首にはリストピンクッションをつけている。

 この世界での裁縫は、一言で言うと繊維の専門家なのだという。

「モコ草から糸を紡ぎ、糸を織って布にして、布を縫ってお洋服を作るの」

 分業や機械化がないから、素材を用意するところから技術を持つ必要があるらしい。

「裁縫師が手がける装備は、ローブとかコーティーとか、魔法使いや職人さん向きのものが多いわ。腕のいい裁縫師になれば、機能一辺倒の装備だけじゃなく、見た目がおしゃれなものも作れるようになるわよ。華やかそうに見えるけど腕利きの裁縫師になるには、織ったり縫ったり、とても地味な努力が必要とされる、厳しい世界なのよ」

 コーティーは初めて聞く単語だったので調べてみる。

 Coateeで検索するとショートテールの軍服の画像が出てくる。燕尾服のロングテールを少し短くしたような、ナポレオンの時代のデザインをそう呼ぶのだと思う。辞書だと女性や幼児用の半コートの意とあるけれどあまりピンとこない。

 こちらの世界ではどういうデザインをコーティーと呼ぶのだろう。

 

Lv1.麗しの裁縫師レドレント・ローズ

 改めて受付に向かうと、マロンヌが「あら、冒険者の方ですね」と冷静な態度になった。

「ウルダハの流行発信地、裁縫師ギルドへようこそ。裁縫師は、繊維から糸を、糸から布を、そして布から、さまざまな品を創り出します。特にローブや帽子、手袋といった布製の品々は、機能性だけでなく、見た目の麗しさでも知られています。あなたの冒険を華やかに彩ることでしょう」

 自分で自分の好きな装備を用意できるのはいいなあ。

「ギルドへ入門しますか?」

 勧誘文句にのって頷くと、次は裁縫師ギルドの成り立ちについての説明が始まる。もしこの世界にモニターがあったら、案内映像でずっと流れていそうなどと思う。

 強烈な日光の降り注ぐ、ザナラーンの地で古くから布織物の生産が盛んだったのは、日差しを遮りつつも、涼しく風を通す、 この相反するふたつの要求を満たすために、さまざまな織物が作られたことが発端と言われている。

 繊維業は重要な地場産業として発達していたが、東方交易が始まったことで異国の安物が大量に流入し、 繊維業全体は大きな打撃を受け、業界は大きな転機を迎た。

 このとき、職人がとった対抗策は品質の向上。質のよいものを作り、相応の値段で売ることによって、自分たちの地位を守ろうとしたのである。

 技術を共有し、職人ひとりひとりの品質を高めるために裁縫師ギルドが結成された。

「質の高い織物は高値で取引されて大評判!あっという間にウルダハの繊維産業は息を吹き返し逆に東方交易の重要な輸出品となりました。成功の立役者となった裁縫師ギルドは更に発展し、今では、エオルゼア内外からその技を学ぼうと多くの者が集まっています」

 ギルドの職人には織物サンシルクなどの名店と専属契約を交わしている者もいて、彼らが生み出す製品は、ウルダハのみならず、エオルゼア全体の流行を左右すると言われているのだそうだ。

「とても修行しがいのあるギルドでしょう?」

 やはりここでも一流の裁縫師となるための研鑽をひとつずつ積み重ねていくことが求められる。

 心の準備ができたと答えると、マロンヌは「わが裁縫師ギルドはあなたのように丈夫いえ、才能あふれる方の入門を歓迎いたします!」と明るく言った。工房にいるギルドマスターに自分で申し出ないといけない。

「少しいえ、とても個性的ですが、気さくな方ですのであまり気負ったりせずに声をかけてください。大丈夫ですよ!とって食べたりしませんから !ええ、本当に大丈夫ですからね!!」

 どうしてそんなふうに言うのだろう?

 身体の大きさがあまりに違うので、心配してくれているのかな。

 改めてマスターと向かい合うと、仰け反らなければいけないくらい目線が高い。レドレント・ローズも顎を引いて目を合わせてくれる。

「あら、何?私がレドレント・ローズ、この裁縫師ギルドのマスターよ。美しすぎてよく踊り子と間違えられちゃうのよねえ。でも、間違いなく私がギルドマスターよ。あなたは入門希望の冒険者さんね。このギルドの成り立ちについては受付のマロンヌからきいたわね?裁縫師は、見た目は華やかだけど修行はとっても大変なの。それでも入門したい?」

 私は頷く。

そう、いい返事ね。素直ないい子は大好きよ。裁縫師ギルドに入門することを認めてあげましょ。裁縫師のヒナチョコボちゃんにはこのウェザードニードルをあげるわ。初心者用の縫い針よ」

 ヒナチョコボちゃん!

 旅の始まりに聞いた雛チョコボッ子を思い出させる呼称で、ちょっとテンションが上がってしまった。ワイモンドと知り合いとか、同じ世代とか、初心者を呼ぶときの共通言語があるのかななどと考えながら、もらった縫い針を装備した。

 

ほの白く光る糸巻

 

Lv1.モコモコをつむいで

「いいこと?針は裁縫師にとって一番大事な道具よ。乱暴に扱ったりしたら、針に代わって私がチクチクおしおきしちゃうんだから!」

 マロンヌの言う個性的ってこの口調のことかしら。

 世話焼きお母さんというかお姉さんというか。独特の圧があるのは確かだ。中学生の頃の家庭科の先生も道具の扱いには厳しかった。

 身支度の後は、最初の課題が待っている。

「その縫い針を使って草糸を1個作ってちょうだい。草糸は、ふわふわのモコ草をつむいで作る糸よ」

 モコ草は持っていないし、自力では採集できないものだ。ギルドの入り口にいるギギマから買うことができると教わる。

「そうそう!ライトニングシャードも必要よ。作り始める前に、調達しておくことを忘れないで。考えてても裁縫の腕は上がらないわ。素材を使って実践あるのみ!さあいってらっしゃい」

 ライトニングシャードはいつの間にか蓄えがあった。ギャザラーとクラフターは結びついているクラスなのだなあと実感する。

 ギルド受付でマロンヌの隣にいるギギマからモコ草をいくつか購入した。

 工房の隅で作業に取り掛かる。よくわからないながらモコ草の繊維を紡ぎ、課題の草糸ができた。こうして糸から手作りするのだから、なるほど「長く厳しい修行」をイメージしやすい。

 納品すると、マスターは「うふふ、あなたの作る草糸はどんな手触りかしら」と言い、チェストの上に鎮座する紡錘を眺め回した。

 紡錘は台座の溝にささって垂直に立っていた。上下にストッパーのような形がついているので、駒巻き芯にも似ている。それに手をかざして水晶を読む占い師のような動きがちょっと奇妙だ。

「あらやだ!この草糸とってもなめらかね。あなたが丁寧につむいだのがよくわかるわ。草糸は、縫い物をする職人にとって最も基本的な材料のひとつなの」

 レドレント・ローズはようやく身体を起こし、「たかが糸と思うかもしれないけど、とても大事なことなのよ?覚えておいてね」と念押すように言う。

「どんなに綺麗な布があっても不揃いな糸じゃ、いい服は縫えないわ。あなたの作った糸は、まずまず合格ね。これなら素敵なお洋服が縫えそう。この調子でいっぱい草糸を作って練習しなさい。作って作って作りあきたころに新しい課題をあげましょう」

 製作手帳には草糸を必要とするものがたくさんあった。これは作り飽きそうだし、自分でモコ草を採集できるようになりたいとも思った。

 マスターは「あなたが腕をあげてくるのが楽しみだわ」と微笑んでいたけれど、なかなか手強そうなクラスだなあ。

 それはそうと、美を追究するギルドマスターがくださる装備がマッドグリーンのクルタだったこと、ちょっと解せないです。

物陰に溶け込む地味さ