エオルゼア社会科見学旅行

2022年7月初めてエオルゼアの地に降り立ちました

体験学習:彫金師(1)

食堂 じゃないです

 ザザリックの用事で彫金師ギルドを訪れたとき、受付のジェマイムが「ギルドマスターのセレンディピティーちゃん確かに彫金の腕は超一流なんですが、なんか危なっかしくて、ハラハラしちゃいますわ」と言うのを聞いた。

「悪い虫がつかないといいけどああ、おネェさん、心配ッ!」

 セレンディピティって幸福を発見する能力のような意味だと思っていたけれど、これが本名なのかな。特別な才能がありそうなお名前だと思う。

 紫色の髪を頭の後ろでツインテールに結んでいて、よくよく見ると金縁っぽい丸眼鏡をかけている。着ているピンタック入りのシャツや細々と金細工アクセサリーのついた服のデザインが可愛い。差し色の紫がかったブルーも似合っている。

 彼女は「気軽にセレンって呼んでくださいね」と言っていた。

 先代のギルドマスターが突然引退し、セレンディピティーがマスターに就いたのはつい先日なのだそうだ。

「でも、彫金に対する腕と知識については、誰にも負けないと自負しておりますっ! 胸を借りるつもりで、どーんとおまかせくださいっ!」

 ウルダハのギルドのなかで最もフレンドリーなマスターかもしれない。まだ話していない人もいるけど。

 彫金とは、この世界でも貴金属の加工技術のことを指すようだ。

 ウルダハには豊富な鉱物資源が眠っている。掘り出された鉱石や原石を加工し、命を吹きこむことで、芸術の域にまで高めるのがこの世界での彫金師の仕事である。

「その技術は、単にきらびやかな宝飾品に限りません。例えば戦場の兵士さんたちが身につける防具、魔法を操る呪術士さんたちの使う杖などなど。彫金師の技は、様々なものを創りあげることができるのです。どうです? わくわくするお仕事でしょ?」

 両腕を広げて掌を上に向ける仕草がこの上もなく得意げな「どう?」のニュアンスがあって、良いと思う。

 

 あらためて受付のジェマイムのところへ行き、入門したいと申し出た。

 鉱物や宝石、骨や牙といった素材に眠る魅力を、磨いて引き出し、輝かせる職人たちの集う場所が彫金師ギルドだと聞くと、いかにも煌びやかだ。受付カウンターの奥に、金色、銅色、銀色の延べ棒のような塊が置いてある。

 彫金師は指輪や耳飾り、首飾りなどの宝飾品のほか、属性の力を宿す宝石をあしらった、呪術士用の魔器なども作ることができるそうだ。

 ジェマイムは私の反応に「嬉しいお返事です!」と喜んでくれた。

 豊かな鉱脈に恵まれたザナラーンは、掘り出された鉱石や原石を加工する彫金技術が古くから必然的に発展した。ウルダハが交易都市として栄えると、民を彩る華やかな装飾品への需要も高まり、緻密にして精巧な彫金文化が花開く。

 特に名門宝飾店エシュテムは、東方より名工を招いて職人たちに技を伝授させるなど、新風を吹き込ませていった。

 この時に作られた私塾のような職人集団が、やがて彫金師ギルドとなる。

 ギルドの目的は技術の継承と、新たな技術の開発。また、悪質な贋物の流通を阻止し、彫金師たちの名声を保つことも目的のひとつだ。そのための審美眼を養うことも使命としている。

「彫金師と聞くと、一見、華やかな世界を想像するでしょう? しかし、一流と呼ばれる彫金師となるには、弛まぬ努力と、地道な鍛錬が必要です。そう、まるで砂色の原石が、何万回という研磨によって、輝きを放つ宝石になるように

 そうした苦心を厭わないなら、ギルドマスターを紹介してくれると言うから、もちろん入門しますと返した。

 

Lv1.彫金少女セレンディピティ

「すぐそちらの工房にいらっしゃいますから、声をかけ、入門を希望する旨をお伝えください」

 作業フロアに降りると、ギルドマスターにさっそく叱られてしまった。

「あっ! コラ~! また勝手にウロチョロしてっ! 職人さんたちの邪魔をしないでくださいっ!って、ご、ごめんなさいっ! てっきりまた、魔法人形がイタズラをしてるかと思いまして

 身体が小さいから間違われたのかな?

 入門希望者だとわかってもらい、快く迎え入れてもらった。

 マスターとしての威厳や頼もしさよりも、親しみやすさを感じる人だ。「気軽にセレンって呼んでくださいね!」と言ってくれる。初対面の相手に対する壁のなさや陽の気を目の前にすると、現実のわたしは腰がひけるのだが、彼女にはずけずけとした雰囲気はない。

 セレンディピティーがマスターに就任したのはついこの間なのだそうだ。だから自分のことを「マスターになったばかりの未熟者なのですが」と謙遜する。

「お互い初心者同士、がんばりましょう!」

 私の名前を聞いてとても美しいと褒めてくれたり、私の名前が刻まれた装飾品が、将来名門宝飾店エシュテムの店頭に並ぶかもしれないので「そんな夢のような日が来るのを目指して、努力いっぱい、がんばりましょうっ!」と鼓舞してくれる。

 なんだか、そうすることでセレンディピティーが自分自身のことも奮い立たせているように聞こえてしまった。私の五感が歪んでいるのだろうけど。

 ギルド入門の記念にウェザードチェーサーハンマーをもらったので、マイキャラクターを開いて装備を整えた。

 新しいクラスを得る時は、ギアセットに登録してあるララフェルの初期装備に切り替えてからギルドの門を叩いている。これもロールプレイの一種なのかな。

 クラス「彫金師」を修得、製作手帳が開放されました。

お店屋さん じゃないです



Lv1.銅は熱いうちに打て

 セレンディピティーは多分、基本的に人を褒めたりするポジティブな語彙が優勢な人なのだと思う。

「ハンマーを装備できましたね。わぁ、とってもお似合いですよ!」

 練習課題として、彫金の初歩の初歩、カッパーインゴット作りに挑戦することになった。

 製作を行うクラスを得たのは初めてだ。作る前には素材と、加工の力を生み出すシャードというものが必要になるらしい。先ほどウィンドシャードをもらったところなので、あとは素材なのだが、これはギルド受付のアイスタンから購入できる。

 必要な銅鉱が二つ不足していたので、練習のためにも一旦採掘師の姿になって素材を採りに行くことにした。

 銅鉱は西ザナラーン・ササモの八十階段を降りた先にもあった。

 しばらくしてカッパーインゴットをひとつ作り、ギルドに戻る。セレンディピティーにそれを渡すと、彼女はチェストの上に台紙を敷き、製錬鋳造された粗銅塊をその上に置いてじっくり眺めた。

「ふ~むふむ、これは

 すぐそばに、私より少し背の低い魔法人形ネジが立っていて、急に唸り出した。

全然ダメ、サイアク!  かっぱーダケニ、銅~デモイイ!」

 駄洒落か

「ってコラ、ネジっ! カッパーインゴットを鑑定するのは、マスターである私の役目なのっ!」

 セレンディピティーはネジに向かって叱り、私に向かって「あ! ご、ごめんなさい。びっくりしましたよね?」と気を遣った。

 ネジは彼女のアシスタントを務めているそうだ。

 魔法人形は、超一流の彫金師が錬金術や呪術をはじめとする、様々な知識を注ぎ込んで創り上げた魔法のからくり人形で、このギルドで彫金師たちの良きアシスタントとして活躍しているという。

 ネジは中でも特に古い個体であり、代々マスターのアシスタントとしてこの彫金師ギルドに受け継がれている存在だった。

ネジジ! ネジ ハ コノぎるどノ、陰ノ支配者ナリ! ヒレ伏セ! 不器用ナ愚民ドモネジジジジ

「ちょっと性格に難アリなんですが。彼の頭の中には、過去百年のギルドの歴史と、彫金技術の全てが詰め込まれています。彫金師ギルドの生き字引、ってところですね。生きているかどうかは微妙なラインですが

 ネジは金の装飾のある古めかしく赤い立派な甲冑を着ていて、壺をひっくり返したような形の兜をかぶっている。兜のてっぺんには白くて丸い飾りがついている。羽根をたくさんつけて丸く整えてあるのだろうか。

 兜の顎紐が金属らしいので、余計に取っ手のついた逆さ壺に見える。その縁から黒い影と光る二つの目が覗いていた。

 細い体に比べてとても大きな頭部だ。歴史と技術を詰め込むとこのくらいになるのかもしれない。ネジの物言いのおかげでくだらないことを考える。

 ギルドマスターははっと思い出して、私の作ったカッパーインゴットのことをこれでもかというほど褒めてくれた。

「とても丁寧に作られていて純度、輝きともに素晴らしい出来栄えです! 初心者なのに、これだけのものを創れるのは、なかなか才能があると思いますっ!」

 ハンマーに慣れた頃にまたギルドに顔を見せるという約束をした。

 ネジは「オトトイ キヤガレッテンダイ、バーロー!」という定型文を発していた。

何から言葉を学習したんだろう