体験学習:格闘士(2)採掘師(2)
しばらく寄り道をしていたおかげで、クラスのレベルが次の課題を受けるに相応しい数字になった。
苦手意識の強い呪術士を優先したが、次は格闘士ギルドに向かう。
格闘士:Lv5.岩よりも硬く
ハモンおじいちゃんは私の訪いを手を叩いて喜んでくれた。
「フォッフォッ、真面目に鍛錬しているようじゃのう! 今日からは、連続攻撃の基礎を学んでもらうのじゃが…その前に、ウォーミングアップの走り込みじゃっ!」
やっぱりギルドマスターなので厳しい。
「都市内に古びたギル硬貨を散りばめてあるからのう。お主は、時すらも追い抜く速さで、それを拾い集めにいくのじゃ! 走り回るときはスプリントを活用するがよい。スプリントを使用するとのう…疲れるんじゃ!!」
スプリント、あまり使ったことがなかったけれど、全力疾走ということだろうから、それは疲れるよな。
「疲弊した体が、どれくらい経つと回復するのか。そういったことも意識しながら走りまわると良いぞ。いざ技を打つときに、疲れて手が上がらな~い。…なーんてことにならないためにも、今のうちに、体で覚えるのじゃ!」
良い先生だなあ。例えば小さな頃ピアノの先生についていたとき、指の動かし方やストレッチの仕方を教わったことはなかった。鍵盤の叩き方弾き方だけ。ピアノを弾く前後のことは教わらない。
スプリントは、戦闘中は十秒、それ以外では二十秒、走る速度を上げられる。しかしその秒数を超えると、疲弊して一分の回復時間が必要になる。
経験を積んで体力がついたら、疲労回復の時間は短くなるのだろうか。
古びたギル硬貨は、すぐ近くから離れたところまでナル回廊のあちこちに散らばっている。それを集めてギルドに戻った。
「ほれほれ古びたギル硬貨はワシが置いたからのう、さっさと返してくれんかのう?」
古びてくすんだギル硬貨には、横顔のような意匠がある。流石にアラグ銅貨よりも凝っていた。
「ひぃ、ふぅ、みぃ…。ふむ、500ギルか、しっかり貰っておくぞい!」
結構な量でしたね。
「…ゴホン、では連続攻撃の基礎修行その壱。それは、岩よりも硬い一撃を手に入れるための修行。…その名も岩殴りの修行じゃ!」
スコーピオン交易所近くの岩を連撃で打つと、岩に擬態したアーススプライトが現れるので、四つの試練の岩に潜む敵を、全て倒せとのことだ。
「思ったより敵が強くてピーンチ!! …なんて時はスプリントを使い、一度退くのも良い判断じゃろう。体勢を整えたら、拳を構えて再度挑戦するのじゃ! 岩を打ち、敵を砕き、硬い拳を鍛えてくるのじゃい!」
都市内エーテライトの使い方にも慣れて、迷わず移動できるようになってきた。確かにスプリントを使えば早いのだが、効果の切れるたびに回復を待ってアクションを使うという行為にまだ馴染めない。都度都度の動作を面倒がってしまう。
交易所の周囲にある低い岩などに試練がある。連撃を使ってアーススプライトを出現させてそれを討伐するという流れだった。
四箇所分を終えてハモンに報告すると、愉快そうに笑った。
「やはりお主、見込みがあるようじゃ。お主の底抜けのスタミナを見ておると、昔のワシを思い出すようじゃよ」
「師匠、よかったわね。新人さんの修行、順調みたいじゃない!」
道場の方からチュチュトがやってきて言う。
「まぁ、拳聖と謳われたワシが、Moneliを指導しておるのだ、当然じゃよ!」
チュチュトは「スタミナは大事よ!」と言っていた人だ。
「おお、そういえばMoneliには、師範代のチュチュトを紹介しておらんかったな」
「チュチュトです。師範代といっても、まだまだ未熟なの。一緒に頑張ろうね!」
にっこり笑ってくれる。落ち着いたグリーンが基調のおしゃれな色合わせの装備をつけていて、参考にしようと思う。差し色って大事だ。
「チュチュトはワシがギルドマスターになった時、一番初めに弟子になった子なんじゃ。…当時弟子はもう一人いたんじゃが」
ハモンがギルドマスターになってかなり長いのだと思っていたから、驚く。チュチュトは幼い頃から格闘士を目指していたのだろうか。事典によると、ハモンは十年以上前から六十歳と自称しているようだ。
「…師匠、もうその話はいいじゃない。ところで師匠、私がMoneliのために町中に置いておいた小銭、師匠が回収してたわよね? あれ私のなんだけ…」
「チ、チュチュト。そ、その話はいいじゃろう。いいか、今はMoneliの成長の話じゃからな」
これは後でチュチュトに知らせて置くべきではなかろうか。
「ゴッホン! Moneliよ、さらなる鍛錬をつんだら、次の修行に臨むからのう! ワシのような素晴らしい拳聖になるためにも、日々の鍛錬を怠るでないぞ! フォッフォッフォッフォ!」
おじいちゃんは新しい武器のホラの他に、ご褒美の服を選ばせてくれたが、ピンク色のカスタムシャツは自分には違和感しかなく、結局アラグ錫貨をもらった。
エオルゼアデータベースで確認すると、カスタムシャツはここでしか得られない装備のようだ。貴重なものをくれようとしたおじいちゃんの気持ちを無下にしてしまったかもしれない。でも好きな色の服じゃないと着ないからなぁ。ごめんね。
採掘師:Lv5.死して獣は骨遺す
採掘用の服に着替えてから、採掘師ギルドを訪ねた。アダルベルタが「おっ! 来たわね」と迎えてくれる。
「ちゃーんと、働き続けていたみたいじゃない? 使い込まれたそのピックを見ればわかるわ。その様子なら、次のシゴトを任せられそうね」
採掘師って掘っているとすぐレベルが上がるのでびっくりします。
「今回のシゴトで覚えてもらうのは掘らないこと…ああ、もちろん休むって意味じゃないからね。闇雲に掘るんじゃなくて、欲しい物に合わせて、採掘場を選べってことよ。そういうコトを学んでほしいの」
そう、どこに何があるのかわからなくてその度に調べたりしている。
ザナラーンでは西と東で採れる鉱石が変わる。地域ごとに埋蔵されている資源が違うという話だった。
「どの地域で、どんな物が採れるのかという知識が駆け出し採掘師と、熟練採掘師の分け目になるのよ。その知識を学ぶことが、今回の課題よ。今回は骨片を十個、採掘してきてくれる?」
アダルベルタは骨片の埋蔵された場所のヒントをくれた。
ギルドを出た先の回廊で、「銀鉱の質がイマイチなんだ」と話している人がいた。どこのギルドに属しているのか、まだ着ている服を見ただけではわからない。もう一人が「採掘師ギルドに文句言うかぁ」と言う。
質の低い素材では質の低いものしか製作できないだろうから問題になりそうだ。
ナル大門とザル大門は、ウルダハ操車庫あたりに行きたい時にどちらから出たほうが近いのだろうといつも悩む。
骨片は獣骨の欠片である。採掘のアクションは表面から掘り出すような動作なので、地表に近いところに埋まっていた化石なのだろうか。採掘してきた骨片をアダルベルタの前に広げると、一つ一つが意外と大きかった。動物の腰椎に見える。
十個の骨片を早足で運んでいた時、骨片同士はぶつかって硬い音をたてたりしたのかしら。
「うん、無事に骨片を採掘できたわね。どうかしら、目当ての採掘場を見つけるのに苦労した? でもね、その経験を重ねたぶんだけ、キミの採掘師としての知識は増したわ。次に骨片を探すときには、迷わず正しい採掘場を選べるでしょ? それが知識を得るってことよ」
アダルベルタは骨片をじっくり観察し終えてそう言った。
「ほかにも、クラフターたちがどんな素材を扱うのか…その知識を持っておくと、採掘師としての視野が広がるわ」
鉱物を採取できる採掘師は、金属製品を作る鍛治師や甲冑師と相性が良い。彫金師には宝石を納品すると喜ばれ、岩塩や辰砂を求める錬金術師とも関係が深い。
素材からいろんなギルドとの関係が生まれる。そこがギャザラーという職の面白そうなところだと思う。
「採掘するときは、そういうことも意識してみて。そのためにも、採集手帳は上手く使いなさい。キミが採掘師としてやっていくための、力になるわ。最初は、理解できない部分も多いとは思うけど、経験を積んでいくうちに、わかるようになるはずよ。そう、何事も経験なの。さらに経験を積んで、キミの知識が増したとき、次の課題を回してあげるから、また来てちょうだいね」
フィールドを歩き回るたびにピックを使っているので、またすぐに課題をもらいに来られそうな気がする。