エオルゼア社会科見学旅行

2022年7月初めてエオルゼアの地に降り立ちました

体験学習:採掘師(1)

ギルドによってフロアの使い方いろいろ

 前に採掘師ギルドに立ち寄った時、ギルドマスター・アダルベルタからこのギルドについて少し教えてもらった。採掘師ギルドでのマスターは、採掘師たちのまとめ役のようなものらしい。

「このギルドに集う荒くれ者たちを束ねて、鉱山主からの仕事依頼を効率よくこなせるように、陰に日向に支援するのが役割ってところかな。自分がギルドマスターとして相応しい人なのか、結構疑問ではあるけど精一杯頑張らせてもらってるわ」

 その言い方だけでかなり頼れそうだと思ったものだ。

 採掘とは地中に眠る価値ある鉱物を掘り出す仕事、と彼女は表現した。大雑把に、と前置きしていたけれど、アダルベルタにとってそういう位置づけなのだと思う。

 わかりやすく言えば、冒険者が身に着けている武器や防具、そこに使われている金属部品の素材を集めることも、採掘の仕事だ。

「キッツイ仕事ではあるんだけど、お目当てのものを掘り当てたときの達成感は格別さ。何にも代えがたい喜びがあるよ。そういう形のない喜びのために掘るもよし、はたまた、金鉱でも掘り当てて一攫千金を狙うもよし。採掘の目的を、うちのギルドで問うことはしないんだ」

 かなり自由な雰囲気だと感じる。ギルドでは飲酒可だし、飲みつぶれていても責める人はいない。この雰囲気を好むと好まざるとに関わらず、採掘について学ぶにはここの門を叩かねばならない。

 

 採掘師ギルド受付のリネットは「耳寄りな情報がありますよ」と言う。今、採掘師志願者を募集中なのだそうだ。

「採掘師というのはピックを振るい、金や銀に代表される鉱物を採掘する生業です。一攫千金を夢見て、あなたも採掘師を志してみませんか? 当ギルドは、そんなあなたを強力に支援いたします! さあ、入門を希望されますか?」

 穏やかなのに、なんとなく圧を感じる。私は顎を引いて頷いた。

「そうですか、それは素晴らしい決断です! あなたのその決断に、ぜひとも報いたい。こちらも誠心誠意、ギルドのご案内をさせていただきます」

 ザナラーンという土地では、鉱脈豊かで産業の柱としてそもそも鉱業が盛んであったという。鉱業とは、大地を掘り鉱物を得て富と為すこと。採掘師というのはもともと、そうして鉱山で働く人々を指した言葉だった。

 百五十年ほど前、ザナラーンで豊かな霊銀鉱脈が発見され、ミスリルラッシュという空前の好景気が到来し、当時は多くの人が採掘で身を立てようとウルダハに集まったが現実は厳しい。採掘師の立場は弱く、悪徳鉱山主の食い物にされてしまった。

 過酷な労働に対し、支払われるのは僅かな賃金。だが、それを受け入れたままでいる採掘師たちではなかった。彼らは団結して鉱山主に対抗する組合、採掘師ギルドを立ち上げたのだそうだ。

「以来、当ギルドでは先人の志を受け継ぎ、採掘師の労働環境改善のため、日々努力しています。あなたのような新人を迎え入れるのも、その一環。正しい採掘の技を伝授することでこそ、事故や乱開発を防げるのですから」

 ひとくちにギルドと呼ぶ組織も、その成り立ちにはそれぞれ様々な経緯があるのだなあ。この採掘師ギルドの設立趣意は、普段の世界で例えると労働組合に近そうだ。

「私たちと共に歩んでいただけるお気持ちになりましたら、もう一度、私に声をかけてください」

 ギルドのフロアを眺めた時の荒っぽい印象に比べると、受付のリネットにはとても品がある。その口調で「アダルベルタ様」と呼ぶのを聞いていると、真面目な執事といった感じだ。

 私は入門すると答え、アダルベルタの許可をもらいに行った。

 

Lv1.採掘師アダルベルタ女史

 ギルドについて教えてくれた後のリネットは、妙な迫力が消え、快活な口調になる。

「ギルドマスターのアダルベルタさんと話しましたか? 面倒見が良い上に、きっぷが良くて姐御肌。私の憧れの採掘師なんですよ」

 志願者を確保できると、ほっとするのだろうか。きっと普段はこういう話し方なのだろう。

 アダルベルタに声をかけると、「や、キミが新しくギルドに入りたい人かな?」とにこやかに言った。腰に提げたカンテラが眩しい。おそらくオールインワンの作業着の上半身を脱いで、腰に結びつけている。

「採掘師になりたいっていうのなら、ウチとしては大歓迎。現役の冒険者だってのなら、特にね」

 最近のザナラーンでは、技術革新によって低純度の鉱石からも製錬ができるようになり、廃坑の再開発が進んでいるため、人手はいくらあっても足りないくらいなのだそうだ。

「体力のある冒険者なんて、まさに求めていた人材よ。それに、冒険者って行動範囲が広いから、ザナラーン以外の土地の情報が入りやすくなるっていう、ギルドにとってのメリットもあるの。キミは技術を学び、ギルドは労働力と知識を得る。お互い、得るものは大きいわけだし入門を断る理由って、ないわよね?」

 アダルベルタは歓迎してくれている。私も断る理由がない。

「よし、いい返事ね! じゃあ、キミはたった今から採掘師よ!ただし、駆け出しのね」

 採掘師の商売道具、ウェザードピックをもらった。採掘に不可欠なこれを装備して、道具の重さを肌で知ってほしいと彼女は言う。

 

Lv1.赤がね色の宝物

 道具を装備して見せると、アダルベルタは「うんうん、意外と様になってるじゃない。ははっ、似合う似合う、素敵よMoneli」と言ってくれた。何かがツボにハマったらしく笑っている。

「ギルドとしても、早く一人前になってもらいたいし、現場でのシゴトを通じて、技を学んでもらうよ。というわけで、さっそく掘ってみようか」

 ザナラーンでは、銅鉱は初心者にも手頃に採掘できる鉱石らしい。

「あたしが教えるとおりに採掘場を探して、ここだと思う場所を見つけたら、ピックを振り下ろす! 採掘ってのは、その繰り返しなの。初めは上手くいかなくても当然。でも、何度か試すうちに上手く掘れたら、その感覚を忘れず、繰り返してコツを掴むのよ」

 ギルド前のエーテライトをつたってナル大門を出て、採掘場を探した。プロスペクトというアクションを使うと、地図上に採掘場が示される。印のある場所で数回ウェザードピックを振り下ろすと目的のものを採集できた。

 ギルドに戻り、アダルベルタに石材・銅を含有する鉱石を渡した。

「うん、確かに銅鉱だわ、間違いない。やるじゃない素直に褒めておくわ。で、どうだった、結構大変だったでしょう? でも、それが採掘師なのよ」

 十個ほどであれば、それほど苦でもないが、採集する数が増えればかなりの労働量になりそうだ。私の採集した銅鉱を台の上に乗せてじっくり調べていたアダルベルタは、顔を上げた。

「知識と経験、そして時には勘に頼って、大地を探り鉱脈を見いだして、ピックを振り下ろす。そうしてやっと、お目当ての鉱物とご対面ってわけ。どうしたって地味な作業の繰り返しになるけど、苦労ばかりじゃないわ。銅鉱を掘り当てたとき、ワクワクしなかった? 探し求めていた物を手にしたときの達成感、そして、未知なる物を見いだしたときの驚き。この感覚こそが、採掘師の一番面白いところなの」

 彼女自身が採掘をとても楽しんでいるのだろうなと思う。

「採掘師の苦労と醍醐味、その一端を知ったところで、今回の労働はおしまいよ。次はキミが、もう少し経験を積んで、ピックが十分手に馴染んだ頃に来てくれる?  次の課題を出してあげるから、ね」

 アダルベルタはさっぱりしていて気持ちの良い人だ。次の課題も楽しみにしておこう。