観光(1)ゴブレットビュート
採掘師に慣れるため、ウルダハ周辺で採掘できるものを集めて回ることにした。
金槌台地をまだ散策していないので、採集しながらうろうろしてみる。街道に沿って両側に杭打塔という大きな施設が立っていた。一号杭打塔から三号杭打塔まであるようだ。
山型のシルエットで竪坑櫓を思い出し、地中採掘用の施設なのかな?と思ったが、そういう役割のものではないようだ。大きなハンマービークやラスティコブランが多く生息していて、作業に支障はないのだろうか。
一号杭打塔の下で作業員たちが雑談している。呼吸を整えている人や一服している人、「歯車掃除も楽じゃねえや」とこぼす人。作業場にのぼることもできた。機械の動く様子を見ていると、本当に杭を打つための施設らしいとわかる。地盤が弱いとか?
二号杭打塔では銅刃団員が警備していた。視察中なのだそうだ。「画期的な工法で…」と説明する人の声を背に頷く人物はきっと出資する側なのだろう。塔の端の物陰で、「だから金持ちは…」と愚痴る作業員がいる。作業場の上に、ちょっと胡散臭い雰囲気の人たちが「金を積めば余裕さ」などと会話していた。
アデラードという人が杭打塔について教えてくれた。
第七霊災以降のウルダハの人口増加に応じて、高級居住地を増設するための地盤固めをしているという。
「とはいえ、迫る納期に、進まない土地確保…問題ばかりで頭が痛いぜ」
三号杭打塔の作業員は巨大な作業機械の発する音に悩まされていた。「音が頭に響く…」と地面に座り込む彼に対して、「すぐに慣れる」と返す同僚。私は話し声や不規則な雑音なら気にならなくなるけれど、規則的な機械音はどうしても気になってしまう。ここはかなりストレスフルな職場なのではないかな…。
作業場では機械の調子を気にしている人がいた。「少し遅くないか?」と真面目に観察している。
ここからは海が望めた。
金槌台地の崖の下には細い川があり、ノフィカの井戸と呼ばれている。巨大な蛙がたくさんいるのが見下ろせる。
海を見渡せる金槌台地が高級居住地の増設予定地になっているのは頷ける。ウルダハまでの道中に魔物がいすぎなのではとも思うが。
F.A.T.E:Lv6. 強制立ち退き
スコーピオン交易所へ向かおうと、一号杭打塔方向へ引き返すと先ほどはいなかった困り果てた作業員が塔の下に立っていた。
“居住地建設予定地で繁殖したヤーゾンが作業の邪魔になっている ヤーゾン・フィーダーを倒せ“
「ヤーゾンめ、ウジャウジャ集まりやがって…。杭打ち機はくれてやるもんか!」
困り果てた作業員は息巻いているものの、そこから動こうとはしない。蚊蜻蛉みたいなヤーゾン・フィーダーが次々にわいてくるのを、ちょうど居合わせた冒険者と共に討伐した。
倒し終えて見回すと、困っていた作業員の姿は消えている。解決したのならよかった。やっぱり居住地にするには危険な場所なのではないだろうか。
スコーピオン交易所では相変わらずあちこちで荷物の確認が行われている。門の右側にギルドリーヴ発行を担当するグレスフル・ソングという女性が立っている。仕事でも一人でずっとここに立ったままなのは疲れそうだなあ。
観光:Lv5.豪奢なゴブレットビュートの夢の家
門の左にはチョコボがお行儀よく並んでいた。それらを世話しているのがイメだ。彼女は二つばかり気掛かりを抱えているようだ。
「あなたにお願いしたいことがあるんだけど、聞いてもらえるかしら? 」
話しかけると早速頼み事をされた。ここから南東へ行ったところに、ゴブレットビュートという場所があるらしい。そこで居住者を募集しているという。
「ウルダハ都市民じゃない冒険者でも、自分の土地と家を持てる、って触れこみだけど…家も仕事もない難民があふれ返る横で、よくもまぁ、居住地を確保したものよね。そう考えてみると、この話っていかにも眉唾だわ」
杭打塔のアデラードから聞いた高級居住地のことだろうか。
気になって百科事典を開いてみる。金槌台地自体が、
“難民流入に伴い住環境が悪化したウルダハ都市内からの脱出を狙う富裕層向けに、高級市街地を建設する目的で再開発が行われている台地。地盤を安定化させるための杭打ち塔が、金槌を振るう様から、そう呼ばれるようになった。“
こういう由来を持つ地名だった。第七霊災後の新しい名称である。
片や中央ザナラーンのストーンズスロー貧民窟は、
“市民権を持たない霊災難民たちが、より集まって暮らす貧民街。都市から投げた石が届くほどの距離に、石を投げれるような厄介者たちが暮らしているため、そう呼ばれる。“
ウルダハ王家に関わる名所のある刺抜盆地だけれど、やはり盆地には陰の気が停滞するのかな…などと思う。台地ってやっぱり日当たりや風通しの良い印象があって、人が住むのに好まれそうだものな。富裕層向けの施策を打つことで、お金の流れが良くなり難民問題の解決に繋がるといいな。
しかしゴブレットビュートは富裕層向けとはまた異なり、冒険者のための居住区だという。冒険者が霊災後の世界の再建に貢献していることへの報酬みたいなものだろうか。
イメはこの眉唾物の話を寧ろ信じたがっている。
「だって、庭付きの豪華絢爛な一戸建てに住むのが、私の夢なんだもの! ゴブレットビュートへの入口…ササモの八十階段の南にモモラジっていう人がいるわ。その人から、この話が本当かどうか聞いてきて!」
ササモの八十階段を降りて、急斜面沿いに進むと石造の低いゲートがあった。両側を銅刃団員と不滅隊の兵卒が護っている。門を越えるとゴブレットビュート。
「入居したいなら、中の居住区担当官から話を聞くといいわ」
兵卒の手前にモモラジ一等闘兵が待ち構えている。
「よくきた、冒険者よ。自分は、ウルダハを守るグランドカンパニー、不滅隊のモモラジ一等闘兵だ。先日、ラウバーン局長が命を下され、国力増強計画の第一歩として、冒険者の招致を強化することになった」
なるほど報酬ではなくて、これから貢献してほしいということですね。
「この方針を受け、不滅隊では、深き谷間の地ゴブレットビュートを造成した上で、冒険者居住区として開放することにしたのだ。つまり、冒険者に限り、家を建てることのできる土地を、提供することにしたということだな」
優遇措置で人を集めるのには納得だが、本来よそ者の冒険者の待遇が良すぎてもウルダハの民が不満を持つのではと少し心配になる。
「…そうだな、まずはゴブレットビュートへ行き、そのすばらしさを確認してくるといいだろう。もし、冒険者居住区に興味を持ったのならば、現地にいる我が隊の者に、声をかけてくれたまえ。詳しいご案内は、その者がやってくれるだろう。」
私も冒険者には違いないから居住資格はあるのか…。まだ何もしてないけど…。
「ここウルダハでは、水は富の象徴。水豊かなるゴブレットビュートに住むことは、すなわち、富者の証でもある」
やっぱり富む側なのだなあ。
ゴブレットビュートのすばらしさを、この目で確かめてくるといいと言われ、ハウジング行き先選択画面から、よくわからないままゴブレットビュート第1区に移動した。
門をくぐるとすぐ展望台のような広場がある。景観に富んでいるだけでもう富者って感じがする!
展望台の近くにかっこいい制服を着たスタッフが三人いる。ロックピッカーは鍵師で、鍵の掛かったロックボックスの解錠が仕事らしい。他の二人の特殊品納品窓口やスポイル取引窓口、どれもわからないものばかりだ。
広場と居住区をつなぐ橋の入り口に不滅隊の兵卒が立っていた。私にも敬礼してくれる。橋の向こうに水車が見える。巨大な人口滝もあるようだ。
イメが夢見ている庭付きの豪華絢爛な一戸建てがたくさん並んでいそうである。私は兵卒にイメのことを話した。
「居住区に興味があるのかね? …ほうほう。一戸建てを考えている人がいると。ううむ、残念だが、このゴブレットビュートは冒険者に限って、分譲している居住区なのだ。…あきらめてもらうしかないな」
まあそうですよね…。
「お前のような冒険者からの要望は受け付けているぞ! 家や土地について、詳細な話が必要なら、奥にいる居住区担当官に声をかけるといい」
私はまだ富む者ではないので、奥には進まず引き返した。イメに報告すると、
「…なるほど、国力のためなら仕方ないわね。ラウバーン様も演説で冒険者の力を求めてたし、ほかの都市でも、冒険者の力が重宝されていると聞くわ」
アラミゴの猛牛は演説もしているらしい。
「でも、だからって夢の豪華一戸建ては諦めないわよ! この交易所で、しっかりがっつり稼いで、いつか高級居住地に、大豪邸をぶっ建ててやるわ!!」
サムズアップして「いいね!」と言ってあげたかった。いつか金槌台地にイメの大豪邸が建つかもしれない。
こうして都市内エーテライトからゴブレットビュートへ行けるようになった。私もいつか家を持ったりするのかなあ。