エオルゼア社会科見学旅行

2022年7月初めてエオルゼアの地に降り立ちました

体験学習:剣術士(1)

 寄り道をしながらも、剣術士としてこの世界に生を受けた私なので何か行動を起こさなければと思っていた。人々の話を聞いて回るのが楽しいのだけれど、ずっとウルダハにこもっているわけにはいかない。外に出ればきっと戦闘が待っているし、それをこなせないと先に進まないだろうから、ひとまず剣術士ギルドに向かった。この時の私はGladiator Lv3であった。

 ギルドマスターのミラから、剣術について話を聞いた。

「女と思って侮るなよ」

 荒くれ揃いの剣術士たちを率いる実力をもっていても、侮られることがあるのだろうか。「やさしく教えてやってもいいぞ? もちろん剣でな」という台詞も度々言わなければならない機会があるのだろうと思われた。

 剣というエオルゼアで最も一般的な武器を使い戦う術で、戦いの道を進むと決めた者なら、誰でも一度は剣をとるだろうと彼女は言う。

「見果てぬ夢を叶えるため

 ミラもきっとそういう夢があって剣術士になったのだろう。

 私が剣術士を選んだのは、最も一般的な武器という認識があったからだ。普段の世界で武道や武術に関わったことがないので、ファンタジーでのオーソドックスな戦闘術を身につけておこうと単純に考えたのだった。

 このギルドはその見果てぬ夢を現実にするための場所だった。元はコロセウムで戦う剣闘士のギルドで、多くのチャンピオンを輩出している。剣闘士は観客を熱狂させる勇壮な剣さばきと、華麗なる勝利が求められる。つまり剣術は「魅せる剣」としてウルダハで発展した。

 盾を装備し、相手の攻撃を受け流し、相手の攻撃に耐えて起死回生の必殺技で逆転!これが勇壮にして華麗な剣術、勇壮さと華麗さを兼ね揃えた者が最強の剣術士。それがギルドを率いるミラの考える剣術士の定義である。

 ゆっくり見学して良いと言ってもらえたのでお言葉に甘える。

「不用意に手を出して怪我をしないよう、気をつけろよ」

 階段下のフロアには正方形と四本の支柱で区切られた試合台があり、盾と剣を構えた二人が戦っている。これが実際のコロセウムで行われている形式なのだろうか。意外と狭く、この近距離で間合いを計るのは難しそうだ。

 奥の壁にとんでもなく巨大な大剣が飾られている。刃こぼれもあるようだし、過去のチャンピオンが使用した武器なのかもしれないが、こんなものを振り回したらあっという間に台から転落してしまいはしないか。

 試合台の外で、膝をついて息を切らす者を「肘が下がり過ぎだ」と指摘する者がいる。こちらの腰にある武器は短剣のようだ。

 他のギルドと異なり、練習場からさらに下へ続く階段があった。コロセウムの控え室に通じているらしく、本当にこのギルドから試合に出ていくのだと驚く。息を切らしているのは試合を終えたばかりだからなのか、試合台で戦っている二人は試合直前の肩慣らしだろうか。

 想像しながらぐるりと巡って入門を決心し、剣術士ギルド受付のルルツに申し出た。

 

Lv1.最強の剣術士

 ルルツは明るいレストラン店員のような口調だ。

「かしこまり〜、新人一名様ご案内で〜す!」

 ルルツにとってのギルドマスターは剣の達人で、なおかつ美人、ギルドみんなの憧れの存在である。

「強さを求める剣術士と、観客を魅了したい剣闘士たちが、ここで一緒に剣の訓練をしてるんですよ〜!」

 彼女の中では剣術士と剣闘士とは二つに区別されているらしかった。

 改めて入門生としてミラに挨拶をする。私が剣を選んだ理由は問わないが、剣術を極める覚悟があるのかどうかを質された。

 剣は世界で最もシンプルな武器だが、誰でも簡単に扱える武器ではない。シンプルだからこそ、極めるべき剣の道は長く、険しい。生半可な覚悟では、決して進めないぞと念を押してくれている。

 覚悟がある、の一言でミラは私をギルドの一員として認めてくれた。

 早速素養を試すための課題が与えられ、モンスターを剣術で討伐するため中央ザナラーンに向かう。まずは剣の扱いに慣れろということだった。

 この、ギルドに所属するのを認めてから、試し慣れろという順序がなんだか気が長くてやさしいなと感じる。逆なら選抜が厳しい印象だが、とりあえずギルドに入ってみよだと大らかさがある。

 初めての戦闘に緊張して、装備を変えた方がいいのだろうかと防具屋ワルターでチュニックだけ購入し、着替えてみた。所持金があまりないのと、どういう装備が適当なのかがわからないためほんの気休めだった。

 

 都市内エーテライトを使って、ナル大門を出ると刺抜盆地という地名が表示された。ところでこれが初めての野外体験である。アチーブメント「中央ザナラーンに到達せし者」を達成したが、未知の土地の入り口に立ったばかりだ。

 大門を守る銅刃団の衛兵は、ナル大門は特に人の出入りが多く、歩哨の仕事も多くなると話す。大門を出て左手に瓦礫が散乱したような光景が広がっていて、ベルウェルフという人物が立っていた。

「ここは霊災で何かを失った者たちの溜り場さ。商材を失った商人、工房を失った職人怪我を負った元傭兵に、親を失った子供たち。理由は様々だろうが、ウルダハじゃ金が命。最後にゃ、家や市民権を売るしかない。そうして都市内で暮らせなくなった者が、ウルダハへの未練を残したまま集まっているのさ。もちろん余所から流れ着いた難民も多いがね」

 大門の右手には城壁に沿って屋台のような店が数軒並んでいる。陽が沈んで暗くなると、ところどころにぼんやりと小さな灯りが点る。一杯十ギルの何かを売っている店、店主のいない机に本だけが置かれた店、飲食店らしいが店主が腰に手を当てて険しい顔で客を睨んでいたりなど、心温まる景色は少ない。

 煮炊きのための火のそばにもお腹を空かせた人がいる。「できるだけ水で薄めよう」と話しているのを聞くと、戦争中の話を聞いている時のような気持ちになる。

 マーモット、ヒュージ・ホーネット、スナッピング・シュルーを討伐しながら歩きまわった。

戦っているところふうの写真

 

 ウルダハ操車庫という場所に至ると人影がありほっとする。ホーム上で見回りに行くかと話している兵がいて、ギギナスはブラックブッシュからの列車を待っている。

「なぜかちょこっとサボってる時に限って、アマジナ鉱山社のお偉いさんが見回りに来るんだよねぇ」

 列車が来るのを待ってみながら、眺めているとレールが三本あることに気づいた。三線軌条というものだろうか。でも中央のレールには横に線が入っているから歯状レールかな? アプト式なのかもしれない。線路に関する用語で知っているのはこのくらいだ。

 線路を挟んで向かいにもホームがある。そちらのホーム下にいるシシドアもブラックブッシュからの列車を待っていた。酒場で一杯ひっかけたいとぼやいている。夜が濃くなり雨も降ってきた。こんな中でじっと待つのは退屈だろう。

 もう一方のホームにいるパパシャンという可愛い名前のララフェル族は老人らしい口調である。

「霊災から、早五年。ここいらも、ずいぶんと活気付いてきましたわい。この鉄道は、まさにウルダハ復興のシンボル。すべては民たちの努力のおかげですじゃ。老い先短いこのワシも、少しは役に立てるといいのぅ」

 人々のことを「民」と呼んでいるので、政庁層に属する人かもしれない。

 五年前にこの操車庫はなかったか、利用できないほどの状態だったのか。霊災が起こる前、この世界はどんなふうだったのだろう。流民も貧民もいない社会だったのだろうか。

 

 闇のなか、明かりの方へ歩いていくと畑があった。

 大きなカボチャに似たものがなっている。畝に水やりをしている人がいた。

 ヒヒヤジャがこの畑は貧民の食料のために作られたと教えてくれた。

「ナナモ様が作ったんだ。ま、買い占めていくのは結局お金がある人だけどなぁ」

 座って休息しているガガリは、いくら近場に水があるとはいえ、ザナラーンの痩せた土地を耕作するのは大変だったと話す。

「長い時間と、ナナモ様の寄付がなかったらとても実現しなかった」

 作物に適した土を維持するのも大変で、それにもやはり資金が必要になる。

 どこで何をするにも金がいらないということは少ない。ナナモ様とはウルダハの女王のことだ。女王自らの寄付があっても、資金面での苦労が絶えないのは不安定すぎないか。女王であっても好きに使える金額が制限されているのは、健全と言えるのかもしれないけれど心配になる。

 まあ普段の世界でだって、王族がどういうお金の使い方をするのか知らないしな。

 北へ歩いていくと、岩場のある川があった。畑の水源だろうか。

 大きな岩に座り込んで釣りをしているガガリオがいる。ララフェル族なので気安く話しかけてみる。冒険道中にのんびり釣りをしているらしい。

 霊災が起こったときこの世の終わりかと思ったガガリオの目には、ここから一望できるウルダハの街はすっかり元通りに見えるようだ。

「まるで悪い夢だったみたいだよ、あの第七霊災ってやつは」

 別の岩場の上にはヒューラン族に見える息子想いの漁師が立っていて、水面を熱心に見ている。

 苔むした岩は青々として枝の強そうな繁みもある。岩檜葉ではないか。植物にも詳しかったらもっと発見が多くて楽しそうだ。

 「F.A.T.E.に参加してみよう」と言われ、慌てる。冒険者キャンプから発する匂いを嗅ぎつけ、エサを求めるエフトが押し寄せてきた。迫り来るエフトを倒せ、という指示を受けて戦いに参加した。

 

F.A.T.E.Lv.5 夕飯を渡すな!

「息子のために頑張っちゃうぞ~。今日は大漁の予感!」

 川を注視していた息子想いの漁師は、家族のための漁に来たらしかった。川には頭から二本の触角のようなものが生えたオロボンがあちこちにいる。これを食べるのだろうか。

「おや? 川の様子がエ、エフトだーーー!!!」

 岩盤の隙間から長い根が垂れさがって見通しの悪い、川の北方から巨大な山椒魚といった見た目のエフトが次々にやってきた。漁師が「誰かー、エフトを倒してくれー」と心細げに声を上げるので、私はしばらくエフト討伐に集中した。

 ときどき「息子が楽しみにしてるんだよ〜」「ボウズで帰ったら怒られる!」と言うのが聞こえる。討伐は終了したが、水中の魚は逃げ隠れてしまっただろう。もう釣りどころではない。漁師は「一度、出直すかぁ」と肩を落とした。

 去り際「なんて日だ!」と拳を握り、「今日はいったいなんて日だ!!」と地団駄を踏んでいた。

 

 漁師が息子のために手に入れ損なった夕飯を食い荒らしたエフトの群れは、冒険者キャンプを狙ってきたらしい。もし倒さなかったらキャンプが襲われるのだろうか。

 川岸に近いフェスカ冒険者キャンプに立ち寄ってみる。レンズが二重についた眼鏡をかけているメメヌグが、ウルダハ都市内は物価が高いので冒険者仲間とキャンプを作って生活していると話してくれた。

「お前も同じ冒険者なんだろう? 割のいい仕事を見つけたら教えてくれよな」

 膝に肘をついて腰掛けているメメヌグは疲れているようにも見える。

 キャンプ地にはいくつかのテントが設営してあり、冒険者がそれぞれ訓練をしていた。「オラ!有名に!なるだ!」と自分を鼓舞しながら剣と盾を振るっている人は、剣闘士を目指しているのかもしれない。

剣術士と剣闘士の話を思い出したりした

 白い大樹の根元に、無頼のグリスヒルドと呼ばれる長髪の人物が立っていた。その視線の先には、敗北した冒険者が片膝と片手を地面について負け惜しみを吐いている。

「あそこの女が、力比べとか言うモンだからよぉ。ノッてやったら、意外と強ぇでやんの!」

 そこで野良のケンカに私の手を借りたいと言う。

 「手を貸しますか?」と聞かれたので、試しに「はい」を選んでみた。ここまでの討伐が自分で思っていたより上手くいったので図に乗ったのである。

 

F.A.T.E.Lv.5 粗野な勝負師「無頼のグリスヒルド」

 敗北した冒険者に応じた途端、「じゃ、あとは任せたぜ!」と言って彼は走り去った。私はグリスヒルドと取り残されてしまった。

「次の相手はお前だな。楽しみだ、こちらへ」

 そう言いながら彼女は近づいてくる。

 敗北者の「戦馬鹿は勝手にやってな!」という捨て台詞が聞こえた。

 腕自慢の荒くれ女冒険者が自分に挑む挑戦者を求めている。無頼のグリスヒルドを倒せ、とのことだったが、私は先ほど野に出たばかりの足裏の柔らかい新米冒険者なのだった。あっという間に死んでしまい、通りかかった優しい冒険者からの蘇生も満足に受け取ることができず、そのまま野に倒れ伏したままでいた。

 その後ようやくエーテライト・プラザに戻され、しばらく落ち込んだ。

 F.F.さんその節はありがとうございました。御厚意を無下にしてしまってごめんなさい。

 

 剣術士ギルドに戻り、ミラに報告する。

「危うげなく魔物退治はできたか?」

 魔物はなんとかなりましたがと俯いていると、「剣術士としての一歩を踏み出したお前に、この討伐手帳をくれてやる」とそれを渡された。

 討伐手帳には修行に適した敵が記されていて、これを指針に場数を踏めとのことだった。

「そして握った剣の柄が、手に馴染んだと感じたとき、またここに来るがいい。期待しているぞ、新入り!」

 おまけにマーモットステーキなる料理をもらった。携帯食だろうか。オニオンとガーリックを添えたマーモットのステーキだそうだ。自分で討伐したものを食べるという体験はしたことがない。香味野菜と調理しているから多少くさみがありそうだが。普段の世界でのマーモットは齧歯目である。