ウルダハ操車庫へ
Lv.4ウルダハ操車庫へ
クイックサンドで、モモディから「ウルダハの街には慣れた?」と聞かれた。
「いろいろな場所を回って、土地勘は掴めたかしら」
街もおそらく一周はできたし、なんとなく慣れてきた気はする。街の外に出るのにもだいぶ躊躇いがなくなってきた。ザナラーンは広いので、端から端へ足を伸ばすのはまだ先だと思うけれど。
「ウルダハ操車庫にパパシャンさんっていう古い知り合いがいるの。彼ならきっと、初心者に手ごろな仕事をくれると思うわ」
クイックサンドの表玄関を出て、すぐ目の前にあるナル大門を通り、中央ザナラーンへ向かう。
「外には危険がいっぱいよ。それほど強くはないけど、襲ってくる魔物もいるわ。装備を整えていってらっしゃい」
モモディの親切が嬉しい。まだまだですが、一応剣術士ギルドに所属した身ですのでなんとかなると思います。えへへ。
外に出るならついでにこなせる用事も作っていこう、という考えが巡るようにもなってきたので。
寄り道:Lv3.革製品の材料は?
格闘士ギルド前にいるジャジャクタから、頼みごとを請け負った。
「私は格闘士ギルドに出入りしている商人なんだが、練習に使用するグローブや胸当てなど、格闘用革製品の大量発注を受けたのだ。しかし…今、材料が在庫切れでな」
良質な材料となるスナッピング・シュルーという魔物の粗皮をとってきてほしい、とのことだ。
先日はナル大門を出て右手を歩いたので、今日は左手を歩いてみる。こちらにも城壁に沿って屋台がいくつかあるが、商売をしている様子はない。机に腰掛けてパイプを手にした男が古傷が痛むと話している。ランデベルトと似たアクセサリをつけていた。これはどういう慣習なのかがとても気になっている。初めは刺青かと思った。
「…ハラヘッタ」
どこから聞こえるのか見回すと、壺や皿など買うならそれなりの値がつきそうな金物を並べた机の下で、うずくまるララフェル族が呟いていた。
こちら側にはテントが多い。そばで立ち話をしている人もいる。「ウルダハで仕事を探せば…」と考える人と、「無理よ、絶対」と断言する人の会話だ。景気の良さが微塵も感じられない。
他にも座り込んで咳き込む人、乾いた土の上に横倒れている人。
ここのテントは彼らのものではないのだろうか。休んではいられないけれどとうとう身体を支えていられなくなってこんな体勢に?
陽が高くなり、今日は明るい中央ザナラーンを見ている。でも、やはり物寂しい一帯だ。
無事スナッピング・シュルーを狩って目的を果たし、ウルダハ操車庫に行った。
「モモディ殿の紹介で、私から仕事をもらいに来たですと?」
前に一度話しかけてはいるが、今日は両手を腰に当てて、とっつきにくそうな雰囲気だ。パパシャンはウルダハ操車庫の所長を務める人物だった。
「なに、所長といっても名ばかりの名誉職。老後の余生をノンビリと過ごしておるだけですわい」
再び、五年前の第七霊災を境に様変わりしたこの辺りの話を聞かせてもらう。
「霊災によって被害を被った故郷を復興するため、民という民が力の限り、力を合わせて働いた。その結果が、今あるウルダハの立派な威容なのです。この立派な線路も、そのひとつ。民の必死の努力が結実したものですな。…しかし第七霊災の傷は癒えきってはおりませぬ」
インフラがとりあえず整ったので、その他の復興はこれからというタイミングなのだろう。パールレーンやストーンズスロー貧民窟を見るとそう感じる。
「手の行き届かぬ場所、手を入れねばならぬ場所は、まだまだ、たくさんあるのです」
そしてとりあえずインフラが整って不満なく暮らせる人々が、そうでない場所のことを考えなくなるタイミングでもある気がする。
パパシャンは冒険者である私の手助けが欲しいと言うが、今のところ急ぎの仕事はないようだ。
仕事はもらえなかったが、スートブラックのオルタード・サイブーツをもらった。ララフェルらしいブーツからの卒業である。
ウルダハに戻り、ジャジャクタにスナッピング・シュルーのざらついた粗皮を渡した。良質だと喜んでもらえたのでよかった。
「格闘士ギルドは大口の取引先だからな。納品が遅れて仕事に穴でも開いたら、大損失だ」
助かったよ、と労ってもらえるのはこの世界でも嬉しい。