体験学習:剣術士(3)
Lv10.剣閃は槍を折る
ウルダハ市街から離れることが多くなり、なかなか剣術士ギルドにも立ち寄れなくなっているが、マスターのミラは「久しぶりだな」と迎えてくれた。
自己鍛錬を怠らなかったように見えているならよかった。
「では、お待ちかねの次の試練だ、準備はいいな?」
今回の課題は少しミステリーめいている。
巷で剣を持つ者を狙った殺傷事件が起きているが、何故、剣術士だけを狙って攻撃してくるのか、その動機や目的は一切謎だ。まだギルドメンバーは襲われていない。しかし将来、標的になることは想像に難くない。
相手は複数、その獲物は槍だという。
「私の言いたいことはわかるな? お前にはこの犯人探しと、討伐を頼みたい。つまりお前の試練は槍術士との戦いだ」
槍術士たちはストーンズスロー貧民窟周辺に出没しているらしい。
「頭を使え、そして戦術を意識しろ」
戦術って、今までに説明されたかな…。敵視を利用する戦い方の上級編みたいなものだろうか。戦術と戦略は昔見た長編作品の頻出単語だったので耳馴染みはあるけれど。
「ギルドの威信に懸けて、剣に仇なす敵を倒し、 われらが剣の最強たることを証明するのだ!」
発破をかけてもらい、中央ザナラーンに出た。
ストーンズスロー貧民窟の一角で、質素な格好の弱気な剣術士が頭を抱えて震えているので声をかける。
「ひッ! ご、ごめんなさいごめんなさいィィィィ! 殺さないでェェ!」
命乞いをされてしまったが、ちょうど横から敵が襲い掛かってくるところだった。シェーダー族の傭兵は二人、長い槍を手にしている。意外と手早く倒すことができた。
戦闘を終えて弱気な剣術士に声をかけると、ようやく身を起こす。
「はぁ…歩いてたら、いきなり『お前、アルディスか!?』なんて意味不明なこと言われて、襲われたんだ…こ、怖かったよォ~」
彼はアルディスと間違われたようだった。似ているところ。胸元の開き具合が激しい上衣を着ている点しか思いつかない。
一旦ギルドに戻ってミラに事を報告した。モモディとの約束で、アルディスの名前は出せない。
「襲撃犯の討伐、御苦労だったな」
犯人グループは黒衣森から流れたシェーダー族の傭兵団らしい、とのことだった。別口で調査させていたのだろう。
「きっと故郷で食い詰め、目先の金欲しさにザナラーンに流れてきたんだろう。傭兵団も一歩間違えれば、盗賊団と変わらんな。…しかし妙な話だな。 剣術士ばかりを狙った犯行というのが解せない。いったい奴らは何が目的なんだ?」
犯人の正体はわかったが、その目的はまだわからないということだ。
私は新たに知るシェーダー族に気を取られていた。海の方から来た斧術士、今度は森の方から来た槍術士だ。
「マスター!」
緊張をはらんだ声が飛び込んできた。しっかりと装備に身を包んでいるブルースだ。この人が犯人グループの正体を調べていたのかもしれない。
「どうした?」
「例のシェーダー族の槍術傭兵団が、ブラックブラッシュ近郊に出現したとの報告です!」
ブルースの知らせに、ミラが腕を組み「やつら複数いたのか」と舌打ちする。彼女は乗りかけた船だ、と言って私を見た。
「お前にさらなる傭兵団の討伐を任じる」
そしてブルースに向かって、私だけでは心もとないので先輩として共に行き、討伐の手助けをするよう指示した。
そういえば、ここでは「命じる」という言い方はしないのだな。
「新米のお守りってやつですか? いいでしょう。かわいがってやりますよ」
頼り甲斐のありそうな人だ。よろしくお願いします。
ミラは今度の戦いを単純な試練だと扱わない様子だ。もちろんいつも真剣なのだと思うが、教え子の実戦を前にした上官という緊張感があって気が引き締まる。
「今回は敵味方の双方が入り乱れる集団戦になる。相手の敵視を引きつけること、忘れるな!」
敵視担当は私ということになるのかな。剣術士が複数で戦う場合、それぞれで敵視を引きつけて一対一で着実に倒していくやり方をとるのだろうか。
「頼んだぜ、新米! 俺の背中を預けられるに足る剣術士か、戦場でじっくり見極めてやるからな」
ブルースはノリの良い先輩だった。初対面でお互いの命に関わる行動を共にするのに、そういう深刻さを突きつけてはこない。 私は安心して頷いた。
「よし、任務開始だ! シェーダー族の邪な槍を、その剣で叩き折ってこい!」
ヘルズブレード洞穴に到着すると、前に来た時より明るかった。先に着いていたブルースのそばで指定地点がオーロラ状に光っている。
「槍術傭兵団の目撃情報はこのへんらしい。ここはじっくり待機して、敵が再び出現するのを待つぞ」
なんだか警察の張り込みみたいだ。でも特に隠れて待つこともなく、指定地点に触れると、「バトルを開始します。よろしいですか?」と確認され、シェーダー族の傭兵団を倒せという指示が出る。こういう戦いの時、視界の端に制限時間が表示されるので、それでまた落ち着かない気持ちになるのだった。
ブルースが「敵を引きつけてくれ! 受けた傷は、俺が回復してやる!」と言ってくれた。傭兵は三人で向かってくる。
私はターゲットの合わせ方も敵視の取り方もまだまだなので、戦闘を長引かせてしまう。ターゲットが合っていなくて、攻撃できていないことが度々ある。
「くっ! こいつはちょっとキツいぜ…」
すみません、先輩!
しかし私は先輩を死なせてしまった。失敗の後、難易度を選択することができ、Normalを選んで再挑戦した。
始まりの三人、さらに続く三人を倒し、やっと一息つける。
「ふう、なんとか片付いたか…槍術士ってのは手強いぜ」
傭兵たちはトンネルの左右からやってきた。この洞穴で待ち合わせでもしていたのだろうか。
「むっ、まだいやがったか!」
ブラックブラッシュ停留所側からシェーダー族の傭兵隊長が駆けつけてきた。だが一人なので、標的合わせに惑わなくて済む。
「よくやった! お前が敵を引きつけてくれたおかげで命拾いしたぜ。さぁ、早く帰って、お褒めの言葉を頂こうぜ。へへ」
傭兵団は今倒した隊長で最後のようだ。何度か失敗すると、超える力を得るらしい。どういう過程を踏んでも、ブルース先輩に感謝された上に、ギルドマスターから褒めてもらえるのか…嬉しいですね。
キャラクターコンフィグでTargetの設定を変更してみた。
ギルドに戻ると、ブルースが先んじて報告してくれていた。
人から「見事だ」と言ってもらえる機会なんてそうそうないですからね。褒め言葉って割と種類があると思うけれど、聞く機会はなかなかない。褒め言葉がかわいそうだ。
「今回の戦いで、お前は大きな実りを得た。そこでお前に、ひとつ褒美をやろう。…本意ではないのだが、取り決めだ、仕方ない」
急にどうしたのだろう。
ミラは「他のギルドで術を学ぶことを許可しよう」と言った。
ウルダハでは、戦闘技術を学ぶなら格闘・呪術、生産技術を学ぶなら裁縫・彫金・錬金術、採集技術を学ぶなら採掘…といったクラスがある。各ギルドの受付で話だけ聞いたことがあったが、いよいよ剣術士以外のことも学べるようになったらしい。
「お前を手放すのは…惜しい。 とにかく、剣の道は一日にしてならず! 精進を怠るな!」
クラスチェンジが開放された。現在学んでいる剣術について熟知し、その上で他のクラスを学ぶとより理解が深まるとのことだ。
せっかくだから一つに特化する前に、いろいろ体験しておきたいと思う。
「そういえば、お前やブルースの報告によると、奴らは、賞金を目当てに剣術士を狙っていたんだな? 賞金首の剣術士…誰なんだ…?」
賞金目当てなんて今初めて聞いた気がする。どこかで見逃していただろうか。ブルースの調査でわかったことかもしれない。
「謎の剣術士の正体は…?」と問われ、私は「やつらはアルディスと言っていた」と答えた。モモディには申し訳ないが、ここでは謎を明らかにする方を優先してよいだろう。
「アルディスだと!? 」
ミラは激しく動揺し、自分の耳を疑ったようだ。
「…まさか。まさか…帰ってきたのか…ウルダハへ…」
彼女はいつもの落ち着きを失っていたが、マクアフティルという片手剣とホプロンという丸い盾をくれた。ロランベリーレッドのブレーサーを選び終えると、ギアセット開放と表示される。
これまでのミラなら、次回に期待するような一言をくれていたが、アルディスの名前が出るとそれどころではなさそうだし、私が他のクラスへ心変わりする可能性も考えていそうだ。
こんな幕引きで以後剣術士クラスに学びに来ないわけがないのに。
マクアフティルという武器は見た目が独特だ。クリケットバットのように見えるけれども模様が刻まれているので、雰囲気がかなり違う。この辺りを調べるのも面白そうだなあ。